遅れて部屋に戻った俺は風呂に入る前にもう一度、ギターが弾きたくなって防音室へと向かうことにした。

その道中、片付けを終えた律と廊下でばったり鉢合わせる。

「お疲れ」

「ああ、ありがとう」

「俺、もう少しギター弾きたいから先に新たちと風呂入ってて」

「わかった。⋯⋯あのさ、奏人」

すれ違いざまに足を止めた律。

「ん?」

「奏人は咲茉のことをどう思ってるの?」


「なん⋯⋯だよ。急に」

今、こんな話をする流れだったか?

「俺は咲茉のこと特別だと思ってる。咲茉がいなかったらもう一度ピアノを弾こうなんて思わなかった。咲茉の言葉に救われたんだ」

「それ伝える相手は俺で合ってるのか?」

「合ってるよ。俺は奏人のことを仲間だと思ってる。だから、先に言っておこうと思って」

燃えるような目をした律を見るのは初めてだった。

咲茉への気持ちが真剣なんだということが、その言葉と態度からひしひしと伝わってくる。