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八月上旬。 毎年恒例のMEBIUS夏合宿が始まった。
今年は俺たち三人以外に咲茉と律、ファンクラブ会長の持永も参加。
行きの車内で咲茉に寄りかかる律を見ていると平常心ではいられなくなりそうで、俺は窓の外ばかり見ていた。
別荘に着いてからも俺たちはバンド練習、咲茉は小説の執筆で夕食時まで顔を合わせることはなかった。
花火の最後、新提案の線香花火レースをやることになった俺たち。
そして、片付け係でもペアになった咲茉と律。
俺は先に部屋に戻ることになったけれど、咲茉たちをふたりきりにはさせたくなくて途中で引き返した。
「どうかしたの?」
戻ってきた俺を見て咲茉が不思議そうに首を傾げる。
「やっぱり俺も手伝う」
近くに置いてあったバケツを手に取り、運ぼうとするけれど咲茉に止められた。
「それじゃあ勝負の意味がなくなっちゃうよ。ここはわたしと律が片付けておくから奏人もみんなと先に休んで」
ルールをきっちりと守る咲茉。
そう言われたら引き下がるしかない。
「⋯⋯わかった」
俺は持っていたバケツを渋々、咲茉へと手渡した。



