わたしが旧校舎で小説を書いていなければ、奏人と関わることもMEBIUSや海音ちゃん、律と仲良くなることもなかっただろう。
こんなにも楽しい夏が待っているなんて去年の今頃は考えもしなかった。
「ふーん。⋯⋯俺が先に咲茉と仲良くなってたらな」
「何か言った?」
「⋯⋯いや」
「そういえば律ってコンクールには出ないの?」
MEBIUS加入後、律は毎日のように三人とバンドの練習をしている。
「今のところ出る予定はない。今はあいつらと一緒にMEBIUSとしてステージに立つことを一番に考えてるから」
「律ってもうMEBIUSのことが大好きだよね」
「は、はぁ? 誰がいつそんなこと言ったんだよ。集めた花火ってこの袋でいいんだよな?」
照れ隠しか近くにあったごみ袋をわざとらしく広げる律。
「うん」
律の可愛い姿に自然と笑みがこぼれる。
十分ほどで片付けを終えたわたしたちは、それぞれ部屋に戻ったあと入浴を済ませて就寝した。



