「それじゃあ勝負の意味がなくなっちゃうよ。ここはわたしと律が片付けておくから奏人もみんなと先に休んで」

「⋯⋯わかった」

持っていたバケツを渋々、わたしに引き渡す奏人。

「おやすみ、また明日ね。あっ、あと戻ってきてくれてありがとう」

「おやすみ」

奏人を見送ったあと、片付けを始めるわたしと律。

バケツの中にある花火をトングを使って拾っていると律の口から耳を疑うような質問が飛んできた。


「あのさ咲茉と奏人って付き合ってるの?」

「え⋯⋯? な、何言ってるの」

驚きのあまり掴んでいた花火を水の中へと落としてしまう。

わたしと奏人のどこを見てそう思ったんだろう。

「奏人とは特別仲が良いというか⋯⋯見てて信頼関係があるような気がするから」



「特別といえば特別かな。わたしは奏人に歌詞を頼まれなかったらMEBIUSのみんなと関わることなんてなかったと思うし、自分の小説に対する情熱を失ったままだったかもしれないから」

わたしには無理だって何度も心を閉ざしたけれど、そのたびに奏人がわたしの心の中まで入ってきてくれたんだ。

それにわたしの選ぶ言葉を好きだと言ってくれたのは奏人が初めてで、あの日のことは今でも鮮明に覚えている。