「好き」があふれて止まらない!



「わたしは⋯⋯」

どこに座ろうか考えていると、窓側の席に座っていた律に腕を掴まれた。

「咲茉はここに座れば」

「うん。じゃあ、そうしようかな」

わたしは律の隣に座り、残った席に新と千里先輩がそれぞれ腰を下ろす。

「みなさんシートベルトは着用しましたね。それじゃあ出発しましょう」

真鍋さんの出発の合図で止まっていた車が動き出した。

ついに始まった合宿。

まだ車に乗ってるだけなのに胸がドキドキするよ。

「咲茉、着いたら起こして」

律はそう言うとわたしの肩に頭を乗せてまぶたを閉じた。

サラサラの髪が首筋に触れて少しくすぐったい。

「わかった。おやすみ」

最初の頃は警戒心の強かった律が最近はこうして気を許してくれるようになった。

年の離れたお兄さんとお姉さんがいるって言ってたし、本来の律は甘えたがりなのかな。

MEBIUSが律にとって居心地の良い場所になっているなら嬉しい。

車の揺れと律の寝顔を見ていたら、なんだかわたしもうとうとしてきてゆっくりとまぶたを下ろした。