小説を書くために向かった旧校舎。

階段から落ちそうになったわたしの手から離れて空中を舞ったルーズリーフ。

廊下に散らばったわたしの小説と我妻くんの楽譜。

そういえばあのとき、授業に遅れないか心配で枚数もろくに確認しないまま教室に戻ったような。

⋯⋯となると、今、わたしの小説を持っているのは我妻くん?

「う、嘘でしょ」

わたしは顔が青ざめていくのを感じた。

作文を読まれるのだって恥ずかしいのに、あんな妄想全開の文章をクラスメイトに読まれるなんて⋯⋯最悪だ。

「ど、どうか、我妻くんが小説の存在に気づきませんように‼」

両手を胸の前で組んだわたしは、微かな希望にかけることしかできなかった。