「好き」があふれて止まらない!


「あれ? みんな楽器は?」

三人はお泊まりの用意が入った鞄をひとつずつしか持っていない。

「新の父さんがドラムは持ち運ぶのが大変だからって先に別荘に運んでくれたんだ。ついでに俺のギターと千里のベースも」

「新のお父さん、相変わらず楽しい人だったよね」

「うるさいだけだって!」

新のお父さんは昔、バンドマンを目指していて、新がドラムを始めたのもお父さんがきっかけなんだって。

新の活動を誰よりも応援してる素敵なお父さんだって千里先輩が話してた。

「あっ、あの車じゃない?」

隣で声を上げた海音ちゃんの視線の先から、黒のワンボックスカーが走ってくる。

予想は大当たりで、ワンボックスカーはわたしたちの目の前で停車した。

運転席側のドアから降りてきたのは白ひげを生やしたダンディーな男性だった。

「みなさん、おはようございます。私は真鍋と申します。今日から二泊三日よろしくお願いします」

真鍋さんは笑顔が素敵でとても優しそう。

わたしたちも全員で挨拶をして、順番に車へと乗り込んだ。

「わたし奏人くんの隣!」

今日はファンクラブの会長じゃなくて、わたしの友達として来たと話していた海音ちゃんは奏人の隣の席に腰を下ろす。

わたしの隣に座ってくれるんじゃないの⁉

海音ちゃんと一緒にお菓子を食べながら話すの楽しみにしてたんだけどな⋯⋯。

でも、海音ちゃんが嬉しそうだからいいか。