「だから! 何度も言ってるだろ。新はこの部分の音をちゃんと聴けって!」

「わかってる! 今のはミスっただけだって。もう一回、もう一回」

「⋯⋯ったく。やるぞ」

今までよりも騒がしくなった放課後。

音楽室には奏人と千里先輩、それから火花を散らす桜路くん改め(りつ)と新がいた。

律のMEBIUS加入が正式に決まってから一週間。

四人は次のライブに向けて毎日、練習に励んでいる。

校内は一週間が経った今でも新メンバー加入の話題で持ちきりで、MEBIUSのファンクラブ会員も増加中なんだとか。

わたしはというと、八月末締め切りのコンテストに向けて男女六人が寮で繰り広げる青春ラブコメディを執筆中。

その傍らで「また桜路くんのピアノが聴ける」と喜ぶ女の子たちが暴走しないか、海音ちゃんと一緒に常に目を光らせている。

こういうとき、マネージャーという表向きの立場が役に立つ。

今は奏人と相談しながら次のライブで披露するラブソングの歌詞について話し合っている最中だ。

「そういえば今年の夏合宿はどうする?」

夏休みに向けて練習予定表を作っていた千里先輩が手を止めた。

新のドラムの音と、律のピアノの音もピタッと止まる。