「好き」があふれて止まらない!


「海音ちゃんここ廊下だよ?」

「大丈夫。すぐに終わるから」

わたしたちの学校はスマホの持ち込みOK。

だけど、緊急時以外は使用禁止で昼休みの一度だけ確認しても良いことになっている。

それ以外の場面で使ってるのがバレたら一日没収されちゃうの。

わたしは海音ちゃんが先生に見つからないように体全体を使って彼女を隠した。

「返事がきたわよ」

「も、もう⁉」

まだ一分も経ってないよ?

MEBIUSのファンクラブの情報網には驚かされる。

「えーっと、桜路くんがピアノを弾かなくなった理由は過激なファンの暴走らしいわよ」

「過激なファンの暴走って?」

「桜路くん目当てで興味もないのに同じピアノ教室に通い始めたり、コンクールにうちわやボードを持ち込んで騒いだりしてたみたいね」

「そんなことがあったんだ⋯⋯」

「好きな人を困らせるなんて本当のファンじゃないわ」

海音ちゃんはスマホを見ながら口をとがらせる。

さすがファンクラブ会長。マナーには人一倍厳しい。

MEBIUSが活動しやすいのは海音ちゃんがファンをまとめてくれてるおかげだって奏人も言ってたし。

桜路くんにもそんなファンクラブがあれば違ったのかな⋯⋯。