「好き」があふれて止まらない!


「その頃、ピアノを弾く男の子が出てくる小説を書いてたから時々、桜路くんを観察してたんだ。だけど、実際に弾いてるところは見たことがないんだけど⋯⋯」

「本人に話を聞くのが一番だろ! 奏人、千里、明日、勧誘しに行こうぜ。⋯⋯で、その桜路って何組?」

「五組だよ」

「⋯⋯クラスまで知ってるんだな」

「桜路くんも奏人たちと一緒で目立つから」

五組の教室前は桜路くん目当ての女の子たちで混雑していることが多々ある。

だけど、わたしたち一組にはそれ以上に人が集まるから奏人や新は気にならないのかな?

「ふーん」

「何? さっきから変だよ奏人」

「⋯⋯別に。咲茉にも興味ある男がいたんだと思って」

「興味って小説のモデルにしてただけだよ?」

同じクラスでも桜路くんと話したのは一言二言だけ。それもクラス内の業務連絡。

「奏人は咲茉ちゃんが他の男の子を気にかけていたのが面白くないんだよ」

「そんなんじゃねーよ」

面白くないってどういう意味だろう?

そっぽを向いた奏人の耳は赤くなっていて、ますます意味がわからなかった。