「好き」があふれて止まらない!


やっぱり一番はピアノ経験者を探すことだよね。

男子でピアノ経験のある人って誰かいたかな。

一年の頃から人と関わりがなかったわたしに心当たりなんて⋯⋯。

「あっ!」

ふと脳裏に浮かんだのは、女の子たちに囲まれるひとりの男の子の姿。

「どうかした咲茉ちゃん?」

「同じ学年にピアノ経験者がいました! 桜路(おうじ)くんです」

「女子って王子様とか好きだよな」

「違うよ、新。確かに桜路くんは王子様だって騒がれてるけど、わたしが言ったのは名前のほう。桜に路地の路で桜路くん! 知らない?」

「⋯⋯知ってるような。知らないような?」

これは知らないな。

「わたし去年、桜路くんと同じクラスだったんだけど、女の子たちが桜路くんのピアノを聴きたいって話しかけてた気がする」

一年の頃の記憶を必死に思い出す。

「トロフィーを見に家に行きたいって言ってた子もいるからコンクールとかにも出てたと思うんだ」

「やけに詳しいな」

ようやくピアノ経験者を見つけたのに、なぜか奏人は不機嫌そう。