「それかいっそのこと咲茉ちゃんが加入しちゃう?」
「な、何を言ってるんですか千里先輩。わたしには無理ですよ」
初めから無理だと決めずにチャレンジする大切さを学んだばかりだけれど、今回ばかりは例外だ。
小説を書く時間をこれ以上、削ることはできないし、何よりもMEBIUSと同じステージに立つなら三人と同じくらい音楽を好きな人がいいと思うから。
「だよね。さすがにこれ以上、咲茉ちゃんに負担を強いるわけにはいかないか」
「あと、一応わたしも女子なんですけど⋯⋯」
「もちろんわかってるよ。でも⋯⋯」
「「「咲茉(ちゃん)は小説にしか興味ないから」」」
千里先輩と奏人、新、三人の声が見事にハモった。
「それに咲茉ちゃんとならバンド内恋愛も悪くないかなって。どう? やる気になった?」
わたしに向けてパチッとウィンクを飛ばす千里先輩。
先輩は時々こうしてわたしをからかうことがある。
「そ、その手には乗りませんから!」
わたしの反応を見て千里先輩が満足気に笑った。
「さて、冗談はこの辺にしてどうする? 手当たり次第、声をかけてみる?」
奏人は腕を組みながら、新はグラウンドを眺めたまま考え込む。
なにかいい案がないかわたしも一緒に考えた。



