「ピアノ経験者を探しても女子ばっかりで男子は見つからないんだよ」
「女の子じゃだめなの?」
「だめってわけじゃないんだけど⋯⋯女の子に加入してもらうのはリスクが高いかな。だって、俺たちにまったく興味がない子なんていないでしょ? バンド内で揉め事は避けたいから」
千里先輩はメガネをクイッとあげてにっこりと微笑んだ。
すごい自信⋯⋯! だけど、千里先輩の言うとおり女の子が加入したら色恋沙汰は避けられないのかもしれない。
近頃、MEBIUSの人気は高まる一方で、奏人たちは常に熱い視線の中にいるからだ。
海音ちゃんも毎日のようにファンクラブ加入希望者から声をかけられると言っていた。
「どこかに男子でピアノ経験者⋯⋯いや、ピアノに興味がある奴でもいいから見つからないかな」
新はそう言って席を立ち、窓からグラウンドをのぞく。
さすがにその方法だと見つからないんじゃ⋯⋯?



