「出待ちってことはファンの子? MEBIUSって本当に人気だね」
「ファンはファンでもファンクラブの会員じゃない。ファンクラブには出待ち禁止のルールがあって、持永にバレたら退会だからな」
「海音ちゃんってすごいんだね。さすが会長」
咲茉と持永はいつの間にか仲良くなったらしい。
最近はふたりで一緒にいるところをよく目にする。
「よし、人はいないな」
念の為、裏口もチェックしてから外に出た。
「⋯⋯人気があるのも大変だね」
「俺らなんてまだまだだ。この世にはもっとでかいステージに立ってる人が大勢いるからな」
「わたしにはステージの大小はよくわからないけど、MEBIUSも絶対に大きなステージに立つよ! だって、MEBIUSの歌は聴いた人に勇気や元気を与えてくれるから」
咲茉の笑顔が太陽に照らされてキラキラと眩しい。
『バンドで食べていく? そんなことを言えるのは子供のうちだけだ』
『MEBIUSは中学生だからチヤホヤされてるだけ。勘違いしすぎ』
『MEBIUSを好きな理由? 顔かなー。音楽はよくわからない』
今まで似たような言葉を散々浴びてきて、そのたびに絶対に見返してやるって気持ちになった。



