「MEBIUSのラブソング⋯⋯最高だったわ」
ライブ会場から出て廊下を歩いている間、海音ちゃんはずっと目をうっとりさせていた。
「あの歌詞を咲茉が書いたなんて⋯⋯なかなかやるじゃない」
わたしの腕を肘で小突いてくる海音ちゃん。
「あ、ありがとう⋯⋯」
わたしは三日前、海音ちゃんに本当のことを話した。
マネージャーは表向きのポジションで実はMEBIUSのラブソングを書いていること。
わたしは小説を書いていて、我妻くんがそのことを知って声をかけてきたこと。
仲良くなっていくうちに隠し続けるのが心苦しくなったんだ。
せっかく友達になれた海音ちゃんに本当のことを話すのは怖かった。
MEBIUSの歌詞をわたしが書くなんてファンにとっては嫌なことかもしれないと思ったからだ。
だけど、海音ちゃんの反応はわたしが思っていたものとは少し⋯⋯いや、だいぶ違った。



