休み時間は本を読み、お昼休みは旧校舎に消えるわたしと、我妻くん(MEBIUS)にしか興味がなく、ファンクラブ会員たちからは遠巻きに見られている海音ちゃん。


クラスにあまり馴染めていなかったわたしたちが一緒にいるようになると、担任の先生はほっとしていた。

おそらく、ぼっちのわたしたちを心配してくれていたのだろう。

わたしと海音ちゃんは好きなことがバラバラで休み時間も別々に過ごすことのほうが多い。

だけど、移動教室には一緒に向かったり、放課後にはMEBIUSの話をしたりして少しずつ距離を縮めていった。

つかず離れずの関係がわたしたちには合っているんだと思う。

今ではすっかり『海音ちゃん』『咲茉』とお互いを名前で呼ぶようになった。

初めてライブハウスを訪れたわたしに来場方法やライブ中のマナーを教えてくれたのも海音ちゃんだ。

「それにしてもさすがMEBIUSだわ! 学生バンド限定のライブでここまでお客さんを呼ぶなんて」

海音ちゃんが興奮した様子で話す。

このライブハウスはキャパ千人で当日券は完売。

客層はわたしたちと同い年くらいの子からお父さんお母さんたち世代の人までいて幅広い。