円陣を組んだあと、新曲の話を再開した三人。

一か月後のライブで披露する曲はわたしが六番目に書いた『はんぶんこ』に決まった。

「赤線を引いた部分については他にも表現がないか考えてくれるか?」

「わかった」

わたしの書いた歌詞は一発OKってわけにはいかなくて何度も書き直した。

小説も一度書いたものをそのままコンテストに出すことはない。

何度も読み返して改稿をする。

だから、書き直すのは苦じゃないんだ。

お昼休みは今までと同じように旧校舎で小説を書いて、放課後にはMEBIUSのみんなと歌詞について話し合う。

小説を書く時間は以前に比べると少し減ってしまったはずなのに進みは前よりもよくなっていた。

これなら夏のコンテストにも間に合いそう。

そして、歌詞が完成したのは初めて歌詞を見てもらった日から五日後のことだった。

作曲は我妻くんがたった一日で完成させて、MEBIUSはライブに向けての練習を開始した。


わたしの書いた歌詞にどんなメロディーがついたのか気になって聞いてみたけれど、我妻くんは教えてくれなかった。

ライブ当日まで秘密なんだって。

MEBIUSが曲の練習をする期間、わたしは家で小説を書き続けた。

「よし、一度休憩しよう。スマホ、スマホ」

ペンからスマホに持ち替えて動画サイトを開く。

わたしの息抜きはいつの間にかMEBIUSの曲を聴くことになっていて、彼らの存在が日に日に大きくなっていくのを感じていた。