「そのルールがなかったとしても会長の持永を特別扱いしたら、他のファンクラブ会員から目を付けられるかもしれないだろ」
「奏人くんはもしかしてわたしを守るために比高さんを選んだの⋯⋯?」
両手を胸の前で組んで、目をパチパチと瞬かせながら自分の世界へと入っていく持永さん。
我妻くんは否定も肯定もせずに話を続けた。
「俺はファンクラブ会員じゃない比高がいいと思うんだけど持永は?」
「そうね。わたしも比高さんがいいと思うわ!」
え、いいの⁉
「これから俺と比高が一緒にいることが増えても変に騒ぎ立てないでくれって他の会員にも伝えてほしいんだけど」
「わたしが責任を持って伝えるわ。だって、わたしはファンクラブ会長だもの」
す、すごい⋯⋯あの持永さんこの短時間で納得させるなんて。
わたしがMEBIUSのマネージャーになった話は数時間も経たないうちに学校中へと広まり、廊下を歩いているだけで視線を感じるようになった。
「持永さんの伝達力とMEBIUSファンクラブの子たちの拡散力には驚いた⋯⋯」
お昼休みになってようやく一息つけたわたしは旧校舎の階段でひとりつぶやくのだった。



