「好き」があふれて止まらない!


「ありがとう、我妻くん」

「なんだよ急に」

「言いたくなったから」

「なんだそれ。ってか、比高って笑えるんだな」

我妻くんが目を丸くしてわたしを見る。

「え?」

「眉間にしわを寄せて『無理』って言う顔と泣き顔くらいしか見たことなかったから」

「そ、それは忘れて」

「忘れねぇよ。だって、俺らの曲が比高に響いたってことだろ。つーか、それいつ見せてくれんの?」

「あ、ごめん」

持っていたクリアファイルを我妻くんへと渡す。

ルーズリーフの束をパラパラとめくった我妻くんは「は?」と小さく声を漏らした。

な、何? わたしなにかやらかした?

「これ全部、歌詞なのか?」

「そうだけど?」

首を傾げたわたしに我妻くんは声をあげて笑った。

「“我妻くんとわたしは違うから”ってあれ、確かにそうかもしれないな」

それってわたしが二つのことはできないって話したときに言った台詞。

我妻くんの耳に届いてたんだ。

そうかもしれないって、やっぱりわたしには無理だったってこと⋯⋯?

うつむくわたしに我妻くんが言う。

「俺には一日時間があってもこれだけの曲数は書けない。本当に好きなんだな。言葉を紡ぐことが」

わたしが我妻くんとは違うって思うように、我妻くんもわたしとは違うって思うんだ。

顔をあげるとそこには優しく微笑む我妻くんがいた。