ジト目でわたしを見ていたのは、同じクラスの持永さんだ。
「誰って同じクラスの比高だろ」
「知らなーい。だってわたしMEBIUSにしか興味ないもーん。あっ、心配しないでね。一番はもちろん奏人くんだから」
「してねぇよ」
我妻くんの隣に移動して、わたしの頭からつま先までをじっくりと観察する持永さん。
二年になって初めて同じクラスになったけれど、彼女のことは一年の頃から知っている。
MEBIUSのファンクラブをまとめる会長・持永海音。
我妻くんの強火ファンで、MEBIUSと同じくらい有名人だ。
「あなた昨日も奏人くんとふたりでいたらしいわね。奏人くんに用があるならわたしを通してもらわないと。これはMEBIUSのファンクラブにもあるルールなの」
手を胸に当ててふんっと鼻を鳴らす持永さん。
「MEBIUSが活動しやすいようにファンをまとめてくれてる持永にはいつも感謝してる」
「か、奏人くん⋯⋯!」
「でも、比高は特別だから見逃して」
我妻くんはわたしの手を掴むと、廊下を走りだした。
「あ、我妻くん⁉」
わたしはクリアファイルを落とさないようにぎゅっと胸に抱える。
「か、奏人くん⁉ 特別って何! ちゃんと説明してよ~!」
昇降口には持永さんの悲鳴が響いた。



