「今から披露するのは俺たちが初めて作った曲『響け!!!』です。これよりもできの良い曲はあるけど、比高にはこの曲を聴いてほしい。ただ好きなものに対する気持ちを詰め込んだだけのこの曲を」
我妻くんが話し終えると、杉浦くんがドラムスティックをカンカンと鳴らしてカウントをとる。
その直後、三人の音がぴったりと重なった。
我妻くんの表情が変わる。
音に、声に、飲み込まれる。 目が離せない。
鼓膜が揺れる感覚も、鼓動がこんなに速くなることも初めて知った。
時間にするとたった五分。
それなのに、本を一冊読んだときと同じくらい胸がいっぱいになった。
「⋯⋯どうだった?」
「えっと⋯⋯」
うまく言葉がでない。
涙だけがポロポロと目からこぼれ落ちる。
「比高?」
「ご、ごめんなさい」
わたしは気づいたら音楽室を飛び出していた。
「おい! 比高」
背中越しに我妻くんの声が聞こえたけれど、立ち止まることはできなかった。
あんな情熱、わたしは知らない──。



