「それは⋯⋯」
我妻くんは隣にいたわたしに目配せをしてから話を続けた。
「なんとなく書けそうだと思ったから。比高っていつも本読んでるし語彙力がありそうだろ」
一瞬、小説のことを話されちゃうのかと思ってドキッとした。
我妻くん、秘密にしてくれたんだ⋯⋯。
「なるほどな」
手のひらに拳をポンッと乗せて納得の表情をする杉浦くん。
「へー、そうなんだ」
二階堂先輩も我妻くんの説明をすんなり受け入れてくれたみたい。
「今日は一度、俺たちの曲を聴いてもらおうと思って連れてきた」
「そういうことか! じゃあ、さっそく聴いてもらおうぜ!」
「その前になんの曲を披露するの?」
杉浦くんはドラムの前に移動して、二階堂先輩はベースを肩にかける。
「『響け!!!』にする」
我妻くんが曲名らしきものを口にすると、三人は音合わせをはじめた。
音楽室にギター、ベース、ドラム。
それから我妻くんの歌声が響く。
調整が終わったのか、音が鳴り止むと我妻くんがマイク越しに話しはじめた。



