「⋯⋯返してくれるの?」
「最初から返す気だった。さっきはタイミングがなかっただけだ。誰かが無理やり話を切り上げたからな」
誰かってわたしのこと?
「あれは予鈴が鳴ったから。話だって終わってたでしょう?」
「終わってない」
我妻くんはそう言ってわたしの隣に腰を下ろした。
「お、終わったよ。わたし無理だって言ったよね?」
「俺は納得してない」
「そ、そんなの勝手だよ。我妻くんなら他にも頼める人がいるでしょう? 確か三組の相原さんは作文で優秀賞をもらってたし、五組の中尾くんは国語の成績が一位らしいよ」
文章を書くのが得意な人はわたし以外にたくさんいる。
「なんで今、他の奴の話?」
「だって、我妻くんたちラブソングが書けなくて困ってるんでしょ? だから、書けそうな人を紹介しようと思って⋯⋯」
「うん、困ってる。だから、比高が助けてよ」
きれいな瞳がわたしの目をまっすぐに見つめてきて思わずうなずいてしまいそうになる。
イケメンってずるい。
だけど、わたしの意志は固い。



