「やっとひとりになれた」

お弁当を食べ終えた直後、逃げるようにして旧校舎を訪れたわたし。

午前中は休み時間のたびに女の子たちから話しかけられてまったく気が休まらなかった。

原因は今朝、我妻くんと一緒に教室を出ていったから。

わたしが我妻くんと何をしていたのか気になったんだと思う。

『比高さん。今朝、我妻くんとなんの話をしてたの?』

『えっと、図書委員のわたしに音楽の本がどこに置いてあるのか聞きたかったみたい』

わたしの答えに女の子たちはみんな安堵していた。

「我妻くんの人気って本当にすごいや」

「呼んだか?」

「えっ?」

階段に腰掛けていたわたしの目の前に、まさかのご本人登場。

「あ、我妻くんがどうしてここに」

「旧校舎の音楽室を部室として使ってるから」

そ、そうだった! それに昨日もここで会ったんだった。

色々あってすっかり忘れていた。

「だけど、今日は比高に用があって来た。またここにいるんじゃないかと思って」

「わたしに?」

「これ。さっき返しそびれたから」

我妻くんが持っていたのはわたしのルーズリーフ。