「やってみたことはあるのか?」

「⋯⋯ないけど」

「じゃあ、やってみなきゃわからないだろ」

我妻くんとわたしは違う。

同じ中学生なのにギターが弾けて、歌も歌えて。

ステージにも立って、ファンがいて。

歌詞もラブソング以外は書けるんでしょう?

だから、自信を持ってそう言えるんだよ。

「我妻くんとわたしは違うから」

わたしの言葉をかき消すように予鈴が鳴った。

「授業がはじまるし教室に戻ろう」

「⋯⋯わかった」

教室に戻るまでの間、後ろを歩く我妻くんが口を開くことはなかった。