千里先輩が出した手を自然と握る奏人と律。
そして、律の手を新が握ると、今度はわたしに差し出される手。
わたしはあの日と同じように奏人と新の手を握った。
「MEBIUSも咲茉もまだまだこんなもんじゃねぇ。夢に向かって走り続けるぞ!」
奏人の低い声が音楽室に響く。
「「「「「おー!」」」」」
わたしはみんなと一緒に力いっぱい右足を踏み出した。
***
『Emaの人気小説がついに映画化決定! 主題歌を担当するのは最年少でドーム公演を行ったMEBIUSです』
『プライベートでは昨年、MEBIUSのボーカル我妻奏人さんと入籍をされたEmaさん。おふたりは中学生の頃から交際していたらしいですよ』
『まるで小説みたいな話ですね』
テレビからそんなニュースが流れてくるのは十年後のお話──。
fin.



