文化祭から一週間。

わたしと奏人が付き合い始めた噂は全生徒へと知れ渡っていた。

その理由のひとつは、わたしたちが観客の大勢いる体育館で気持ちを伝え合ったから。

そして、もうひとつは海音ちゃんがファンクラブのルールに『推しの幸せはファンの幸せ(※交際は温かく見守ること)』という項目を追加してくれたからだ。

そのおかげもあって、わたしは今までどおり平和な学校生活を送れている。

引き続きMEBIUSのラブソングを担当することになったわたしは今日も音楽室にいた。

「実はみんなに報告があって」

わたしが話し出すと楽器の準備をしていた四人がそろって手を止める。

「あっ、えっと準備したままで大丈夫」

わたしがそう言ってもみんな手を止めたままだ。

みんなが大切な練習時間を削らなくてすむように簡潔に話そう。

「実は昨日、夏合宿で書いた小説のコンテスト結果が出て⋯⋯」

「受賞したのか⁉」

弾けるような笑顔でわたしを見る新。

「それが選外だったんだよね」

「⋯⋯悪い」

「新はいつも気が早いんだよ」

千里先輩の言葉に新は肩をすぼめる。

ま、まさかこんな重い空気になるなんて。

早く次の報告をしないと。