「⋯⋯ってことなんで、続きはこれから本人に直接伝えます」
千里先輩にマイクを手渡してからステージを飛び降りた奏人は、通路を歩いてわたしの目の前で足を止めた。
「俺は咲茉のことが好きだ」
数秒前までステージを見ていたお客さんたちの視線がわたしと奏人に集中する。
客席は一気に静まり返ってわたしが話すのを待ってくれた。
わたしはその場で立ち上がり、奏人の目をまっすぐ見つめる。
わたしが今まで書いてきた小説の中の子たちも、勇気を出して気持ちを伝えたんだよね。
好きな人に自分の想いを伝える瞬間ってこんなにも緊張するんだ。
「わ⋯⋯わたしもっ、わたしも奏人のことが好きです」
返事をした直後、客席からは割れんばかりの拍手が起きた。
わたしの言葉ひとつで好きな人が、奏人が笑ってくれる。
それだけで涙がでそうなほど嬉しくなることをわたしは今日、初めて知ったよ。
「このままここから連れ去ろうと思うんだけど、どう思う?」
「えっ、えぇっ?」
「いいと思いまーす!」
動揺するわたしの代わりに返事をしたのは海音ちゃんだった。
「会長の許可ももらったし行くか」
目の前に差し出された手をそっと握ると、奏人は走りだす。



