「まずはMEBIUSのみなさんおめでとうございます」
「「「「ありがとうございます」」」」
「最後の曲はボーカルの我妻さんが作詞されたと伺いました。どんな思いが込められていたのでしょうか?」
「今まで俺が書いたラブソングは綺麗な言葉を並べただけのものでした。だから、今まで自分で書いたラブソングを歌ったことはありません。途中で書くことさえもやめてしまいました」
奏人は遠く見つめながら淡々と話をする。
「俺が今日ラブソングを書けたのは、人を好きになる気持ちを知ったからです。咲茉に出会わなかったらこの曲を書くことはできませんでした」
奏人の口からわたしの名前が出て、客席がざわつく。
MEBIUSのメンバーも奏人が何を話すのか知らなかったのか、驚いたような表情をしていた。
それはわたしも同じで、奏人の言葉にぽかんと口を開く。
さっきまで遠くを見ていた奏人はわたしへと視線を移し、目を合わせたまま話を続けた。
「『ルーズリーフ』に込めたのは、咲茉を想う気持ちです」
客席からは悲鳴にも似た歓声が上がる。
海音ちゃんは興奮した様子でわたしの肩をバシバシと叩いてきた。



