三回戦の対決内容が即興ラブソングに決まり、俺たちは一度控室に戻ることになった。

再びステージに立つのは三十分後。

つまり三十分の間に即興ラブソングを完成させなければならないということだ。

「よりによって即興ラブソング対決かよ」

新はわかりやすく頭を抱えている。

「あっ、MEBIUSのみなさんどーも」

俺たちの控室にノックもせずに現れたのはグランツのボーカル染谷だ。

「なんの用だ?」

「最終対決の前にライバルの顔を拝みに来ただけだよ。MEBIUSのホームで対決するのに俺らが勝ったらごめんな」

「お互い油を売ってる暇なんてないはずだろ?」

即興でラブソングを作らないといけないのはグランツも同じだ。

「うちは今ドラムの曽根(そね)が歌詞を書いて、ベースの小田切(おだぎり)が作曲をしてる」

「⋯⋯それってお前は何もしてねぇってことじゃん」

珍しく鋭いツッコミを入れる新。

「う、うるさい」

染谷は顔を髪よりも真っ赤に染めながら自分の控室へと帰っていった。

「あいつ何がしたかったんだよ」

律はため息を吐きながら部屋の鍵を閉める。