一週間後の文化祭に向けて、装飾担当のわたしは放課後クラスの女の子たちと最終確認をしていた。
うちのクラスのフォトスポットでは、ペイントされた壁や小道具を使って映え写真が撮れるようになっている。
「最終確認はこんなものかな。みんなお疲れさま」
文化祭実行委員の山田さんからOKをもらって帰ろうとしていたとき、律に呼び止められた。
「咲茉、千里先輩が音楽室に集合だって」
「わたしも⋯⋯?」
近頃のMEBIUSは文化祭で披露する楽曲の練習を毎日遅くまで行っていて、作詞担当のわたしはみんなが練習期間に入ってから一度も音楽室に顔を出していない。
わたしが呼ばれたってことは作詞の関係かな?
「きゃー、律さまよ!」
「律さまー!」
廊下ですれ違った女子生徒が律を見て目をハートにする。
律は整った容姿と華麗にピアノを弾くその姿から、一部の女の子たちの間で律さまと呼ばれるようになった。
「相変わらずすごい人気だね。私生活に影響は出てない? 大丈夫? 何かあったらすぐに言ってね」
「今のところ平気。咲茉の言ってたとおりMEBIUSのファンが目を光らせてくれてるみたいだから。あと、表向きのマネージャーも頑張ってくれてるみたいだし?」
わたしが海音ちゃんと一緒に動いていたこと、律は知ってたんだ。
「何もないみたいで、よかった」
「でも、毎週のように告白はされるけど」
「ま、毎週⋯⋯」
現実でもそんなことって起こるんだ。



