海音ちゃんは奏人のことが好きなんだと信じて疑わなかったわたし。
推しと恋愛って必ずしもイコールで結ばれているわけじゃないんだ。勉強になった。
「この数か月間、すごく悩んだのに」
「早くわたしに言わないからよ」
海音ちゃんの言葉にぐうの音も出ない。
「咲茉の恋バナをたっぷりと聞きたいところだけど、こっちが先ね」
海音ちゃんはまだ一割ほどしか塗り終わっていない横断幕に視線を落とす。
この一時間、口ばかり動かしていたわたしたち。
「⋯⋯終わったら聞いてくれる?」
本当は海音ちゃんに話したいことがたくさんあったんだ。
「もちろんよ」
わたしは海音ちゃんが黄色に塗った部分を、海音ちゃんはわたしがはみ出した部分をお互いに修正し合った。
そして、三時間かけて横断幕を作ったあと、海音ちゃんは日が暮れるまでわたしの話を聞いてくれた。



