「好き」があふれて止まらない!


「文字を見間違えただけで、動揺してたわけじゃないから。あと別に咲茉が本気で奏人くんから染谷秀に乗り換えるとも思ってないわ」

「奏人限定?」

MEBIUSから染谷さんに乗り換えるんじゃなくて?

「えっ? だって、咲茉は奏人くんが好きなんでしょう?」

「⋯⋯へっ? へぇっ⁉」

海音ちゃんの言葉に動揺して、枠の外まで大きくはみ出して色を塗ってしまったわたし。

慌てて下書きを確認すると塗り直しができそうな場所でほっと胸をなで下ろした。

「海音ちゃんびっくりさせないで」

「びっくりって、まさか隠してるつもりだったの? 夏合宿のあとからあんなに熱い視線で奏人くんを見てたのに」

わたしってそんなにわかりやすい態度を取ってたの⁉

必死に隠してるつもりだったのに⋯⋯。

「黙っててごめんね。いつか言わなきゃとは思ってたんだけど⋯⋯。海音ちゃんも奏人のことが好きだって知ってたから、なかなか言い出せなかったの」

人と最低限の関わりしか持たなかったわたしが友達と同じ人を好きになる日が来るなんて思わなかった。

「ん⋯⋯? ちょっと待って咲茉。何か勘違いしてない?」

「勘違い?」

「わたしは奏人くんのことが大好きよ。だけどそれは推しとして。一生、MEBIUSを追いかけるつもりだけど恋じゃないわ」

「えっ、そうだったの⁉」

わ、わたしの勘違い⋯⋯。