「好き」があふれて止まらない!


文字がレタリングされた白い布に専用の塗料で色をつけていく。

「それに咲茉の歌詞はファンからも好評なんだから自信を持ちなさい」

MEBIUSのことを誰よりも応援している海音ちゃんにそう言われると不安が和らぐ。

「ありがとう、海音ちゃん」

感謝の気持ちは働いて返さないと。

わたしは横断幕が素敵なものになるように、慎重に色を重ねていった。

「だけど、コピーバンドのグランツがどんなオリジナル曲を書くのか興味はあるわね」

「コピーバンドって何?」

「他のアーティストの曲を自分たちでコピーするバンドのことよ」

だから、グランツの曲は聴いたことがあるものばかりだったんだ。

「へぇー。オリジナル曲は歌わないの?」

「もちろん歌うバンドもあるけど、グランツがオリジナル曲をやってるって話は一度も聞いたことがないわ」

「海音ちゃんやけにグランツに詳しいね?」

「MEBIUSには敵わないけどグランツも有名な中学生バンドよ。路上ライブでは数百人もの人を集めるんだから」

「す、数百人⁉」

そんなにすごい人たちだったんだ⋯⋯。