「好き」があふれて止まらない!


「咲茉ちゃんグランツって覚えてない? 夏休みに出演したライブにいたグループだよ」

グランツ⋯⋯グランツ⋯⋯。

夏休みに見に行ったライブには全部で五組の出演者がいて⋯⋯。

「あっ! 赤い髪をした人がボーカルのグループですか?」

確かMEBIUSの前に歌っていた三人組のバンド。

ボーカルの人が真っ赤な髪で、有名な曲をたくさんカバーしていた。

「そう。赤い髪のボーカルは染谷(そめや)くんっていうんだけど、彼はなぜか俺たちを敵視していて、たびたび突っかかってくるんだよね」

「そのグランツって人たちがどうしてわたしたちの学校の文化祭に来るんですか⋯⋯?」

「染谷くんが校長先生に出演を頼んだみたいなんだ。彼のお父さんが校長先生と古い友人なんだって」

「そうなんですね」

「学校側も盛り上がるならってOKしたみたいだけど、仲良く共演なんてできるのかな。今から不安だよ」

グランツの染谷さんか⋯⋯どんな人だったっけ。

髪の色以外にも何か覚えていないかな。

夏休みライブの記憶を振り返っていると、廊下から誰かが走ってくる足音がした。

「お、おい! 千里大変だ!」

遅れてやってきた新がスマホ片手に音楽室へと飛び込んでくる。

「めんどうなことになった」

後ろにいた奏人はガシガシと頭をかいて、深いため息をこぼした。