ツンデレ当主の生贄花嫁になったら愛されすぎたので私は生贄になりたいんです!

シュヴァルツヴァルト。通称黒い森。

それは非常に広大ですべてを詳しく知る人間はいない。

黒い森はシュヴァルツヴァルトの支配者のものであり、支配者の元には複数の人の姿をした獣筋の貴族が、正統管理者としてそれぞれに与えられた森の一部分を管理しているという。

「正統管理者の一人である狼筋の貴族はね、先祖代々百数年に一度の周期で支配者に捧げる生贄花嫁の儀式を行ってるんだって。ブラックオパールの瞳を持つ娘を生贄花嫁としてね」

「ブラックオパールの瞳の娘を!?」

リーゼに衝撃が走る。

「今年がその儀式の年なんだってさ。噂ではその狼筋の男は半人半獣の身体で獣臭のする汚れた被毛に覆われていて、眼光鋭く口は耳まで裂けていて、大きな尖った牙と長い舌からは常に涎を垂らしているらしいわ」

「獣筋だから狼の特徴が残ったままなのね」

「ね、怖ろしいでしょ? だからあんたは生贄花嫁にされないように、絶対にその左目がブラックオパールの瞳だって誰にも知られちゃダメよ」

「わかったわ。ご忠告ありがとう、イルメラ」

「いいのよ。だって本当はあんたはあたしのお姉様なんだもの。それじゃあ、刺繍がんばってよ」

せせら笑っているようにも見える笑顔でリーゼに手を振ると、イルメラはそそくさと重くて厚い鉄の扉から出て行った。

シュヴァルツヴァルト・黒い森の支配者に捧げる生贄花嫁。

それを怖ろしい狼筋の男が探しているなんて。

自分はその条件に見事に当て嵌まっている。

見つかれば忽ちに生贄花嫁にされてしまうだろう。

リーゼは絶対に自分がブラックオパールの瞳であることを誰にも知られてはいけないと心に誓った。