ツンデレ当主の生贄花嫁になったら愛されすぎたので私は生贄になりたいんです!

ドラゴンは口から天に向けて炎を吐き、吠えた。

「シュヴァルツヴァルトの支配者の森の正統管理者のヴォルフ家の者たちよ。これにて呪われしカミルの名は解放された。もう122年後に会うこともない。さらばだ!」

そう宣言してドラゴンはイルメラとベルタを掴んだまま墜落するかのような猛スピードで焚火の炎の中に飛び込み消えた。

イルメラとベルタの断末魔の叫びが湖畔中に響き渡りその残声が消えた時、あれほど燃え盛っていた焚火の炎が一瞬で消え、紅の月は元の銀色の満月に戻った。

リーゼは櫓の上で息途絶えて横たわるカミルを抱いたまま泣いた。

すると頭上から満月の光に照らされてキラキラと光るものが舞い降って来て、ゆらゆらと傷付いたカミルの胸の上に落ちた。

それは、一枚の美しいドラゴンの鱗だった。

   *   *   *

キングサイズのベッドの上で上半身裸の胸に幾重にも包帯を巻いてずっと眠り続けているカミルの顔を、リーゼは何日も見守り続けていた。

青いほどの白い肌に少しずつ赤みが戻ってきたころ、カミルがゆっくりと目を開いた。

伏し目がちの青い瞳に長い睫毛(まつげ)が影を作っている。

「よかった! 目が醒めた……」

泣いているリーゼをカミルが見つめる。

「リーゼ……俺は一体……」

「カミル様は私を(かば)って心臓を銃で撃たれて大怪我をしたんです。一度は心音も止まったんですが、ドラゴン様が落としていってくれた片鱗をお婆さんが使って生き返らせてくれたの」

「ヴェンデルガルトが? そうだ! ドラゴンは!? あのあとどうなったんだ!? 儀式は!?」

カミルは体を起こそうとしたが激痛で起き上がれなかった。

「起きちゃだめです! 一命は取り留めたけど重傷に変わりはないから。安心してください、すべて終わりました。すべて……」