あいの輪廻








「……こんなの、ありえない…でしょ……、」





ユイトの好感度の数値の高さを見て、思わず呟く。



「は?何が有り得ないの? 笑」


笑いながらユイトは近づく。
私を見詰めるその瞳には、今まで向けられていた冷たい色は無く。

逆に甘い熱を孕んでいた。


「ゃ、……ぇっ、と、……なんでもない、」




きっと、これは何かのバグだ。

誰も好感度が50を超えないゲームで、いきなり好感度が90になることなんて、有り得ないんだから。



「そっか、なら良かった!…これから仲良くしてくれよ?……ずっと、ずーっと、な?」



ユイトは、私の頭を撫でながら呟いた。

頭の中で、何か白い火花が散ったような気がした。







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一旦ゲームを終了し、現実の世界へ戻る。


クリーム色、白、黒がベースとなったシンプルな部屋。
ゲームの世界の家とは違って、可愛げがない。

でも、先程までゲームの世界にいたとは思えない程、現実の世界とゲームの世界は似ていた。

これは、どちらが現実か分からなくなってしまう人も居るのではないか。



……そんなことよりも。


何故、【ユイト】の好感度はあんなに上がってしまったのだろう。


明日、菜子に聞いてみるか。


そう考えて、私は眠りに落ちた。



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「菜子、あのさ、【あいの輪廻】なんだけど……」


「あっ、プレイしてみた!?どーだった!?」



【あいの輪廻】の名を出すと、すぐに菜子は飛びついた。



「好感度上げるのムズかったでしょー!?」



いや、それがさぁ、なんか急に好感度がね――。



そう言おうと思ったのに。


目の前で白い火花が爆ぜたような気がして。


気づいた時、発していたのは






「うん、めっちゃ難しかったよー、全く上がらなかった」




という、真逆の言葉だった。



なんで、なんで ?

言いたいことが、言えない。

異常だと、伝えなきゃいけないのに。

どうして? 喋れない。

喋らせてもらえない。

なんで、なんで、なんで




思考が纏まらない。
なのに、私は思ってもないことを喋り続ける。



「昨日さぁ、【ユイト】…かな?に会って、話しかけたの!でも全然好感度低くて……」

「あーわかる、カッコいいのに、優しいのに攻略むっずかしいもん!」

「ねー、凄いかっこよかったのに…」



違う、好感度が上がり過ぎたの。
バグなの。
だから、もうゲームはやめたい。
やめたいの、やめさせて、



「頑張りたいから、もう少し貸してもらえる?」



違う、もう返したい。

要らない、怖い。

やめたい。



「いいよ!もっちろん!!なんならアレ、あげちゃう!新しいの買ってもらったし?」




要らない、返すよ
そんなの、関係ないから

助けて、菜子

やめて、返してって言って。





「ずっと、とはいかないけど、長く楽しんでね!?」







嗚呼、



【あいの輪廻】からは


離れられないんだ、






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「……はは、っ、“リンネ”、俺から逃げられると思ってんの…?」



プレイヤーの居なくなった【あいの輪廻】の世界で、ユイトは笑う。


リン……じゃない、リンネ。


今まで見てきた、媚びてきた女共とは違う。

俺を、ちゃんと見てくれる。

俺の事を、わかったような口で、勝手に解釈しない。

俺の気持ちを、察してくれた。


愛おしい。




好きだ。



好きだ、好きだ、好きだ、好きだ、好きだ、好きだ、好き、好き、好き、好き、好き、スキ、すき………




俺から離れるなんて、赦さない。



俺のリンネへの好感度が、どんどん上がっていくのがわかる。


離さない。


逃さない。



次、リンネがこっちの世界へ来た時は。





リンネの事を ――。








「…愛してるよ、リンネ……♡」











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《 好感度が上がったよ♡ 【ユイト】100% 》



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