大学生活が始まって数か月。康太さんと孝太さんとの日々は、私にとって特別な時間であり続けた。キャンパスでの放課後やカフェでの会話、課題の合間に交わす笑い声――すべてが、胸に小さな幸福感を灯す。しかし、心の奥では、三角関係の微妙な距離感に悩む日々が続いていた。
康太さんは変わらず明るく、私といるときはどんな時でも笑わせてくれる。ふざけた冗談で場を盛り上げる一方で、ふと真剣な表情を見せる瞬間があり、そのギャップに胸が締め付けられる。孝太さんは、普段は落ち着いていて静かだが、バレーボールの試合やイベントのときは表情が一変し、生き生きと楽しそうにしている。私が悩むと、静かに的確なアドバイスをくれるその優しさに、何度も救われた。
ある日の放課後、私は一人でキャンパスの桜並木を歩いていた。夕日に照らされた花びらが淡く舞い、心が切なくなる。思い浮かぶのは、康太さんと孝太さん、それぞれの笑顔。胸の奥で迷いが渦巻き、涙がこぼれそうになる。私は決めなければならなかった――二人のうち、どちらと未来を歩むか。
その夜、家に帰り、ノートに思いのまま書き出した。康太さんと過ごす時間の楽しさ、孝太さんの優しさ、心の揺れ、どれも大切で、どれも手放せない。しかし、心の奥底で何度も考えた末、私ははっきりと感じた。私が望むのは、康太さんと笑い合いながら日々を過ごす未来だと。
決心を固めた私は、翌日、康太さんに会うために大学近くのカフェへ向かった。ドキドキしながら席に着くと、康太さんがにこやかに手を振る。私は息を整え、静かに言った。
「康太さん……私、あなたと一緒にいたい」
康太さんは驚いた表情を見せた後、少し間を置いて微笑む。
「ゆう……本当に? 嬉しい。僕も、ずっとそう思ってた」
その瞬間、私の胸に温かい光が差し込み、心がふわっと軽くなる。長い迷いの果てに、二人の気持ちが交わった瞬間だった。
それから、私たちは付き合い始めた。大学生活の中で、二人で過ごす時間は増え、笑いも悩みも共有する日々が続いた。康太さんは変わらず明るく、時にはふざけて場を盛り上げ、でも大切な場面では真剣に私の気持ちを聞いてくれる。私も少しずつ、自分の気持ちを自然に伝えられるようになっていった。
大学を卒業する頃、康太さんは小さく笑って言った。
「そろそろ、将来のこと考えようか」
私は頷き、二人で将来の話を具体的にしていった。結婚のこと、仕事のこと、住む場所のこと。話すほどに胸が高鳴り、未来が少しずつ形になっていく。
ある穏やかな休日、康太さんは公園の桜の下で私に手を差し伸べた。
「ゆう、結婚してほしい」
私は驚きと喜びで胸がいっぱいになり、涙が自然と溢れる。迷わず頷き、二人は抱きしめてくれた。その瞬間、すべての迷いや不安が一気に消え、心の底から安心感が広がった。
そして迎えた結婚式の日。青空が広がる春、桜が舞う中で、私は白いドレスを纏い、康太さんと手を取り合う。家族や友人に祝福されながら、私は心から幸せを噛み締めた。式場の窓から差し込む光が、未来への道を優しく照らしている。
誓いの言葉を交わすとき、私は康太さんの瞳を見つめ、静かに心の中で約束する。
「これから先も、ずっと一緒に笑って生きていこう」
康太さんも同じ気持ちで頷く。二人の手は、互いの未来を強く握りしめる。過去の迷いや不安はすべて、今の幸せのための道だったと感じられた。
披露宴では、友人たちの笑顔に囲まれ、笑いと涙の交差する時間が流れる。康太さんはいつもの明るさで私を笑わせながらも、そっと優しく手を握る。その温もりに、私は心から安心する。
この日、私の人生は新しい章に進んだ。高校時代から育んできた想いが結実し、康太さんと共に歩む未来が始まったのだった。心の中の迷いや不安は、今や幸せと希望に変わり、私は静かに微笑んだ。