陽翔が高校後半に入る頃、家の中の空気は少しずつ大人びてきた。朝は以前よりも静かで、陽翔は自分の部屋で身支度を整え、私たちに軽く挨拶をして学校へ向かう。部活や勉強に忙しい日々の中でも、帰宅すると少しだけ幼さの残る笑顔を見せてくれる。それが私たち夫婦にとって、日々の大きな喜びだった。
結愛は中学後半となり、活発で好奇心旺盛、友達との関係やクラブ活動にも夢中だ。家での会話では、意見をはっきり言う場面も増え、兄の陽翔に時折注意されながらも、互いに学び合うような日々が続く。陽翔は頼もしい兄として、結愛の考えを尊重しつつ、必要な時には優しく助言する。
ある休日、家族で公園へ出かけた。陽翔はサッカーのボールを片手に友達と遊び、結愛はブランコや砂場で夢中になって遊ぶ。康太さんと私はベンチに座り、二人の成長を見守る。
「にぃに、見て見て!」
結愛が砂の城を作りながら陽翔に呼びかけると、陽翔は手を止め、笑顔で妹に近づく。二人の関係は以前よりも成熟しており、助け合いと楽しさが自然に混ざり合っていた。
家に帰ると、夕食の準備や後片付けも日常の一部として二人が協力してくれるようになった。陽翔は妹に料理の手伝いを教え、結愛も楽しそうに一緒に作業する。私と康太さんは、その様子を微笑ましく見守る。
「にぃに、これ上手にできたでしょ?」
「うん、結愛も上手になったね」
兄妹の小さなやり取りに、家族全体の温かさが広がる。
学校での出来事も、家族の会話の中心になる。陽翔は部活の練習や試合の話を楽しそうに話し、結愛も興味津々で質問する。私たち夫婦は、二人の成長を耳にしながら、時折アドバイスや励ましを送る。
「今日のテスト、どうだった?」
「うーん、難しかったけど頑張ったよ」
「そうか、次はもっとできるように工夫しようね」
陽翔は少しずつ自分の意見や計画を持ち始め、将来のことを考えるようになった。私たちは、彼の意思を尊重しつつ、必要なときは支え、励ます。結愛も兄の姿を見て、自分も将来に向けて何をしたいかを考えるようになる。兄妹の関係は、ただ遊ぶだけでなく、互いに刺激し合い、成長を助け合う関係へと変わっていった。
夕食後、家族でテレビを見ながら会話をする時間も大切にしていた。陽翔は学校や友達の話を、結愛は学校やクラブの話を交えながら話す。康太さんは静かに笑顔を浮かべ、時折私に目を向けて頷く。私もその隣で、家族の幸せを感じながら微笑む。
ある夜、陽翔がふと私に尋ねた。
「ママ、どうしてパパと結婚したの?」
私は少し微笑み、手を握りながら答える。
「高校の文化祭で一緒に準備や片付けをして、その後花火を見て、心が惹かれたの。だから一緒に人生を歩もうと思ったの」
陽翔は頷き、小さな声で「なるほど」と言った。
結愛も横で静かに聞き、兄の答えを受け止めるように目を輝かせた。
家族の日常は変化しながらも、温かさと絆で満ちている。陽翔と結愛が成長し、学校や友達との関わりを深める一方で、家庭では互いを思いやる気持ちが育まれている。私と康太さんも、子供たちの成長を見守りながら、夫婦としての絆をさらに深めていく。
夜、寝室で二人の子供を見守りながら、康太さんと手を握る。外には夜空の星が瞬き、月の光が差し込む中で、家族の日常は静かに、しかし確かに続いていく。高校・中学生活の成長とともに、家族の物語も新たな章へと進んでいた。