高校二年生になった春、私は新しい学年の生活に少しずつ慣れてきた。授業や部活、友達との会話で忙しい毎日だけど、心の中で楽しみにしていたのは、同じ委員会に所属する二人の先輩と過ごす時間だった。
一人は康太さん。明るくて誰にでも優しい笑顔が印象的で、放課後の委員会ではみんなのムードメーカーでもあった。だけど、二人きりになると、普段とは違う落ち着いた雰囲気を見せることがある。将来や人生について、ぽつりぽつりと話すその姿に、私は自然と心を引かれていた。
もう一人は孝太さん。普段は静かで落ち着いているけれど、バレーボールをしているときの表情は生き生きとして、まるで別人のようだ。放課後に私が相談をすると、じっくり話を聞いて、的確なアドバイスをくれる。どんなに小さな悩みでも、否定せずに受け止めてくれるその優しさに、私はいつも安心していた。
ある日の放課後、私は委員会室で行事の資料を整理していた。机の上にはコピー用紙や計画書、カラーペンが散らばり、忙しさの中で少し散らかった雰囲気があった。そこに康太さんが入ってきて、明るく声をかける。
「ゆう、これ手伝ってくれる?」
彼の隣に座ると、机の端に手が触れそうになる距離で作業をする。胸の奥が少しドキドキした。普段の彼の明るさと、こうして二人きりのときの静かさ、そのギャップが私はたまらなく心地よかった。
孝太さんは少し離れた机で、資料を丁寧にチェックしている。
「ここ、こうしたほうがいいかも」と私が提案すると、静かに微笑みながら「うん、いいと思うよ」と返してくれる。その声に心が落ち着き、自然と頬が緩む。放課後に三人で過ごす時間は、授業では味わえない特別な瞬間だった。
文化祭や学校行事の準備も、私たち三人にとっては楽しい時間のひとつだった。机を並べて飾り付けをしたり、展示の配置を考えたり、三人で相談しながら作業を進める。康太さんと笑い合いながら作業すると、胸の奥が温かくなる。孝太さんと意見を交わすと、安心感に包まれる。二人それぞれが、私の心に違った彩りを与えていた。
帰り道、校門を出て家へ向かう途中、私はふと立ち止まり、今日一日の出来事を思い返す。康太さんの明るさと、ちょっとだけ見せた真剣な表情。孝太さんの落ち着きと、私の悩みを受け止めてくれる優しい眼差し。二人の存在は、ただの先輩以上に、私の心を大きく揺さぶるものだった。
その夜、日記を開き、今日の放課後のことを書きながら思う。
「二人のどちらも、大切な存在……でも、私の気持ちはまだ整理できない」
それでも、二人と過ごす時間は確かに特別で、胸が高鳴る瞬間も、心が安らぐ瞬間も、どちらも私の日常を豊かにしていた。
春風に揺れる校庭の桜の下で、私はそっとつぶやく。
「この二人と、これからどんな時間を過ごすんだろう……」
まだ何も始まっていない日常が、確かに少しずつ動き出している。高校二年生としての私の日々は、恋の予感と小さな冒険に満ちた特別な時間へと変わろうとしていたのだった。