メリーでハッピーなトゥルーエンドを


 一瞬、彼が息をのんだ気配があった。
 それから御影は嘲笑にも感嘆にも似た笑いをこぼす。

「本気か?」

「当たり前だよ。悪いとか申し訳ないとか、そう思うのもやめにする。そんな中途半端な気持ちしかなかったから花菜を失い続けてたんだ」

 ()え渡るほど真剣に返すと、自分でも驚くほど冷たい声色になった。

 そりゃそうだ。
 こんな決断、いままでの僕なら選択肢にすらなかった。

 悪魔に魅せられているのかもしれない。
 どのみち魂を売ったんだ。とことん冷酷になればいい。

「本来の運命をたどるべきだ。“今日”を抜け出すにはそれしかない」

 花菜は生きている。
 それが、それだけが事実だ。

 柊先輩の私情で殺される(いわ)れなんてないし、そんな身勝手は許せない。

 だけど、彼はとことんシナリオを歪曲(わいきょく)させる。
 結末を変えるために、あの子が生きている未来へ進むために、どんな犠牲も厭わないはず。

(だから……砂時計の薔薇が枯れて巻き戻せなくなるまで、僕が“矯正”し続ける)

 あの子が亡くなるという本来の結末に向かわなければならない。

 彼らはそれを受け入れるべきなんだ。
 だからこそ、僕が直接的な強硬手段に出るしかない。

 書き換えられたシナリオを、歪んだ世界を軌道修正する。

 それでもきっと、先輩たちはそんな結末を拒絶する。
 先にあの子を手にかけたところで、報いとして結局は花菜も命を狙われることになるかもしれない。

(そのときは……また同じことの繰り返し)

 花菜の代わりに僕が死ぬ────何度も繰り返してきたその結末をたどるだけ。

 僕はただ、最終的に彼女が無事ならそれでいい。

「面白ぇ。カナを庇って死ぬ判断は毎回変わんねぇけど、レイを殺すなんて言ったのは初めてだな」

 腕を組んだ御影がいっそう笑みを深めた。

「何だってするよ。花菜を救うためだ」

 正しいかどうかなんてどうだっていい。
 彼女が当たり前に生きている未来を信じることだけが希望だ。

 そんな明日が訪れるなら、僕は悪魔にだってなれる。