七海がホールの中へ戻ると、中は薄暗くなっていた。

 ホールの人々がスクリーンに視線を向けている様子から、明るさを落として、注視してほしい映像でも流れているようだ、と七海は感じた。

「お待たせしました」

 元のテーブルへ戻り、八尋に声をかけた。

 八尋は元通りの場所にいたし、姿もまったく変わっていなかった。

 なのに、なぜかちょっと眉を寄せて、「困った」と言いたげな表情をしていた。

「あ……一華さん。おかえりなさい」

 言われた挨拶も歯切れが悪く、七海は内心、首を傾げた。

「はい。また新しい映像が始まったみたいですね。こちらはプロモーション?」

 でもそのまま追求するのも無粋だ。

 何気ないことを言った……つもりだった。

 七海のその言葉に、八尋はますます気まずげになる。

「あ、はい。実は先ほどの話が……」

 八尋がそう言いかけたときだった。

 映像から軽快な音楽が流れだす。

 今度は歓談中のときとは違って、はっきりと聞こえるくらいの音量だった。