アーサ王子の君影草 下巻 ~約束の箱庭にて、再び~

「……ああ。二人で一緒に考えよう」

 しっかり頷いて、震える肩をそっと抱き寄せた。
 完全じゃなくていい。噛み合わなくてもいい。
 それでも皆、同じ方向を向いている。その事だけは確かだった。


 *   *   *



 陽光が、王宮の大広間の奥深くまで降り注いでいた。

 その中心に、ブラッドフォードは立っている。

 高く掲げられた紋章の下には長台が置かれ、その上に並ぶ幾つもの文書。
 重ねられた羊皮紙と、異なる意匠の印章。

 煌都パルフェ。
 アザロア国家。
 マルティーン帝国。
 そして───シュサイラスア大国。
 それぞれの名を冠した証が、そこに揃っていた。

 ライオネルが一歩前に出る。
 その動きに合わせて空気が引き締まる中、厳かに告げられた。

 オゥ鉱脈都市は───
 諸国の承認のもと、新たな国家として認められる。

 その名は、オゥレガリア。

 大地と鉱石の記憶を受け継ぐ、新たな国。
 その響きが、静かに広間へ広がっていく。

 ゆっくりと進み出るブラッドフォード。差し出された文書へと手を伸ばし、ひとつひとつの印を確かめる様に見つめた。それは、誰かに与えられたものではない。積み重ねてきた年月が、形になった証。

 筆を取り、これからの未来を繋ぐ。
 王としてブラッドフォードが名を刻んだ。
 かつて地下で灯した、かすかな光。それとは比べものにならない程の光が今、彼を包んでいた。