アーサ王子の君影草 下巻 ~約束の箱庭にて、再び~

(……また、はぐらかされたな)
「……分かった」

 一言、重い返答。
 だがその胸にあるのは安堵ではなかった。むしろ、輪郭がぼやけていく様な感覚。

 この瞬間。運命は同じ道へと収束する───。

(何が、真実なんだ)

 分からなくなる。それでも視線を横へ向ける。
 スズランの存在を、確かめながら。

(……守る。必ず)

 胸に誓った。

「スズランは、俺が守る」

 その言葉だけは迷いなく口にした。
 ジュリアンが「では……」と軽く手を打ち声をあげる。

「今夜はこのあたりで。話も一区切りついたことですし、小フリュイ公国外遊の件は別途話し合いましょう」

 にこやかだが、やはりその視線は冷静に全員を見渡している。あくまで穏やかに。でもそれ以上踏み込ませない様に、場を閉じた。

 ハリの部屋を出た後、重たい空気がそのまま足取りに残る。ラインアーサは言葉を持てずにいた。

(……どう説明すればいい)

 ブラッドフォードや父に。そして、スズランに。
 〝確かな答え〟がどこにもない。

「……アーサ。あんまり思い詰めすぎるなよ」

 少し後ろから、ジュリアンの声。
 振り返ると、いつもの落ち着いた顔がそこにある。
 短い言葉。しかしそれだけで十分だった。
 ラインアーサは肩の力を抜いて小さく息を吐く。

「……そう見えるか?」

「まあ、ね」

 迷いなく言い切る。それ以上は踏み込まない。ただ、ひとつだけ。