アーサ王子の君影草 下巻 ~約束の箱庭にて、再び~

「……皇子だからといって、畏まる必要はありません。これまで通りで構いませんから……ライアもそう思うでしょう?」

 静かにはっきりと告げる。

「ああ……確かに、な」

「それに、血を引いているとはいえ──私は、それを望んだことはありませんので」

 その声の色は、かすかな拒絶が滲んでいた。

「……スズラン嬢に対しての件は、、謝罪で済むものではないと、理解しております。ただ……首輪飾りに込められていた魔像術(ディアロス)から解放されたことは、何よりです」

 ハリはそれ以上踏み込まず、そこで言葉を切った。それは謝罪にも、弁明にもなっていない。

「ハリさん」

 スズランが一歩、踏み出しかけて足を止めた。それでも、言葉だけは紡いだ。

「……ひとりで、抱えなくていいのに」

 その声は、あまりにも優しかった。
 だからこそハリの胸の奥で、何かが強く軋む。
 ハリの思考が絡まる。

(やめろ……違う…、その言葉は)

 胸の奥で、スズランの言葉を強く否定する。

 ───その言葉は〝君が〟言うものじゃない。

「……ですが」

 想いを断ち切る様に、言葉を重ねる。

「もしも、貴方がたが小フリュイ公国へ向かわれるのであれば──私も同行させていただきます。それが……私に出来る、責任の取り方でもありますので」

 話を切り替える、明確な意思で。
 それ以上の感情は、見せない。

 一瞬の沈黙の後、ラインアーサは大きく息を吸い込んだ。