アーサ王子の君影草 下巻 ~約束の箱庭にて、再び~

 「守るために閉じた」その一言は、アダンソン家がこれまで貫いてきた在り方と重なり、彼女の心を打っていた。
 小フリュイ公国とリリィオス公妃に、静かな敬意を抱いた。その上で、そっとスズランを見る。
 強くて、優しくて、凛と美しい。
 かつて憧れた存在の隣に立つにふさわしい人だと、素直に思う。だからこそ、焦らず、変に構えず、少しずつ信頼を築いていこうと胸に刻んだ。
 だがサリベルはジュストベル同様、一歩引いた位置で観察していた。やはり〝選ぶ〟という部分に着目。
 力が人を選ぶのか。人が力を選ぶのか。理屈的に考えてしまう。そして「スズランが選ばれたのなら、それには意味がある」という結論を導き出す。
 だからこそサリベルも、静かにスズランを見守る側に回るのだった。
 そしてジュストベルは、その場に生まれた微細な変化を、誰よりも冷静に見ている。その場に漂うわずかな緊張と変化を見届けた上で静かに口を開いた。

「……本日はここまでといたしましょう。十分に実りある議論でした。続きは改めて協議いたしましょう」

 張りつめていた空気が緩やかにほどけていく。
 ジュストベルの言葉は重かったが、だからこそ皆、目を逸らさなかった。
 それでも今日の授業も終わりだ。前を向く為にも、今は休むべき時だった。

「そうだな。続きは、また明日だ」

 ラインアーサが穏やかに告げ、スズランは小さく頷いた。