アーサ王子の君影草 下巻 ~約束の箱庭にて、再び~

 ライオネルは察した。
 ハリの言葉は筋が通っている。だが覚悟の匂いが違う。何か〝執着〟の様なものを感じた。だからこそ───額に手を当て、僅かに顔色を落としたハリを見てライオネルは小さく息を吐く。

「……今日は、ここまでにしようか」

 そう言って扉の方へ視線を向ける。

「コルト。ジュストベルも呼んでくれ。ハリ君にいつもの頭痛に効くお茶を」

 命令というより気遣いに近い声音。
 扉の外から「畏まりました」とコルトの返答が帰ってくる。ほどなくしてジュストベルが静かに入室し、湯気の立つカップが目の前に差し出された。

「頭痛は大丈夫かい? 私に気にせず、冷める前に」

「お言葉に甘えさせていただきます……」

 ハリは言葉の通り静かにカップに口を付けた。ライオネルは椅子から立ち上がらずハリを見据えたまま、ゆっくりと言葉を落とす。

「真実を語らぬ事と嘘を吐く事は、似ているようで違う……君は今日、すべてを話さなかった。だが、逃げてもいない」

 その視線は厳しいが、やはり拒絶はない。

「今はこれ以上問わない。だが、選ばなかった言葉も渡さなかった答えも、いずれは君自身に戻ってくる」

「はい……」

 ハリの返事にライオネルは少し口元を緩める。

「その時まで……いや、君がこの国に居ようと思う限り、ここは君を拒まないよ。それが王としての私の判断だ」

 場は静かに締められる。
 ハリはお茶を手にしながら言葉にならない何かを胸に流し込んだ。