君は、狂愛の檻の中 ~偽りの君に恋をした~


「………首尾は?」


中学生くらいのガキ──“カケル”が吐き捨てた言葉に、空気が変わる。


あまりにも場違いだった。

海辺にも。
この夜にも。
さっきまで流れていた涙にも。


“首尾”。


そんな言葉を、こんな年齢のガキが平然と口にすること自体がおかしい。

そこにあるのは、子ども同士の会話なんかじゃない。

もっと暗くて。
もっと深くて。


……血の匂いがする世界の言葉だった。



「………まあ、ぼちぼち」


フイッと視線を逸らした由良と、バチッと目が合う。……けれど、その瞳に宿っていた熱は、一瞬で氷のように冷え切っていて。


俺が知っているはずの”由良”は、どこか遠い場所へ行ってしまったかのように、すぐさま視線を外された。



「…………でも、あの時なんか言ってなかったか?どっか組織に襲撃されたとかなんとか」


……あの時?組織………?

”カケル"の口から漏れる不穏なワードが、夜の静寂を切り裂く。

俺の知らない時間、俺の知らない場所。





「ああ、ちょっとね………でも追い返しはしたし、別に問題は……」


「ふーん?あ、そういえば◾️◾️がお前の事呼んでたぞ。最近会ってないからって」


会話に混じる、聞き取れない誰かの影。

俺の前ではあんなにも脆く、守ってやりたいと思わせたあいつが………。
今は俺を蚊帳の外に置いて、知らない誰かの話をしている。