「………お前、これ、誰か他に知ってんのか」
「…………」
必死に問いかけてみても、由良からの返事はない。
……いや、今の俺にとっては、返事なんてどうでもよかったのかもしれない。
ただただ、目の前の事実に対して自分の頭の処理がまったく追いついていなかった。
月光に照らし出されたその横顔は、息を呑むほどに整っている。
冷たそうな白い頬、
長い睫毛が落とす繊細な影。
そして、濡れた瞳だけが、やけに生々しい現実味を帯びて揺れていた。
───綺麗だ、とか。
そんなありふれた言葉なんかじゃ、到底足りない。
もっと質の悪い、強烈な衝撃が、俺の胸の奥を容赦なく殴りつけていた。
(……なんだ、これ)
今まで“地味な男”として見ていたはずの存在が、ほんの一瞬で、全く別のものへと書き換えられていく。
目を逸らせない。
───逸らしたくないのに、心臓が苦しくて息が詰まる。
──自分が混乱しているのか、理解しているのかすら分からない。
ただひとつだけ確かなのは、今この瞬間から、俺の中で“由良”という存在の見え方が、もう二度と元には戻らないということだけだった。
肩をつかんだ手に、グッと無意識に力が入る。
「────おい、」



