君は、狂愛の檻の中 ~偽りの君に恋をした~



「九条………」


そのつぶやきと共に急速に冷えていく指先。

悲しみも、驚きも、一瞬でどこかへ消え去り、代わりに胸の奥からせり上がってきたのは、どろりとした、冷たい怒りだった。



お父さん、お母さん、紘、凪、朔夜。
由宇───。


あの人……九条は、私から、私たちから……一体どれだけのものを奪ったんだろう。




───許さない。

体の奥底からふつふつと湧き上がる感情。


それに呑まれそうになりながらも、私はそっと震える由良に背中を預けた。








「ねぇ由良、前に約束したよね。───私たちは、二人でひとつ。」


幸せも、怒りも悲しみも。
全部、二人で分かち合おうって。

だから───




「ひとりで、背負わないでよ……」

「───っ──」


見開かれた由良の瞳から、涙が溢れた。

声も上げず、ただ静かに、堰を切ったように涙が彼の頬を伝っていく。



辛かった、よね。

私がひとりで任務をこなしている間も。
由良も、同じように傷ついていたんだ。



毎日毎日ひたすらに働いて、ストレスを吐き出す術もなく。

孤独に………何もかもを溜め込んで。




─── 由宇のことだって。

誰にも相談できずに、ひとりでずっと、悩んでたんだよね。




「ごめんね」


由良が、双子失格だって言うのなら。

私だって─── 双子の妹、失格だよ。






「っ、由衣─── 」



ねぇ由良。
これからは………私が、由良と同じものを一緒に背負うから。

これ以上、"ひとり"で溜め込まないで。
"ひとり"で、傷つかないで。

私を……これ以上、"ひとり"にしないで。



それ以上はなにも望まないから。
どうか、どうか───