君は、狂愛の檻の中 ~偽りの君に恋をした~




「目の前で………この思い出の場所で、心臓を撃ち抜かれました」



淡々とした声。


けれど、その一言だけで、潮騒の音が遠くに押しやられる。

………波の音が、急に“別の世界の音”みたいに感じた。



(……そうか)

今さら、点が繋がっていく。


初めて会った時の違和感。
生きているのに、生き急いでいないみたいな生気のない目。

笑っていても、どこか薄い影が落ちているような、胡散臭かった理由。


───全部。
これだったのか。



俺はゆっくりと息を吐く。

胸の奥が、さっきまでとはまた別の重さで沈んでいく。



……あぁ、だからお前は。

俺の服を掴んで………「離れないで」なんて言ったのか。



あの時の由良は、俺を見ていたんじゃない。
ただ………。


あの日ここで、目の前から消えていった“誰か”の影を………必死に重ねていただけだった。


俺の中に生まれた熱が、形を変える。




甘さじゃない。
恋でもない。

もっと鈍くて、重くて、やりきれないもの。



波が寄せては返すたびに、言葉にならない感情だけが静かに沈んでいった────……